The Graphic Design Review

58

私の仕事道具

私の仕事道具

20世紀末に制作環境のデジタル化がすすみ、グラフィックデザインはAdobe社製を代表とするアプリケーション上で行われることが前提となってきています。しかし、デザインの仕事はアプリケーションやデスクトップで完結するものではなく、日常的な活動やコミュニケーション全体を通じて行われています。そこで本記事では基本的なグラフィック、ネット系のアプリケーション以外にその人が愛用している仕事道具について、13名のデザイナーにアンケートを実施。グラフィックデザインという仕事をより広い視点から見つめ直してみたいと思います。

【私の仕事道具-No.01:石川将也】

私の仕事道具

FLUX社製レーザーカッター〈beamo〉

アクリル板や薄手の木材をカット・彫刻できます。Adobe Illustratorで作ったパスデータを、寸分違わず半立体として現実に持ってこられるところが好きです(ぐっときます)。もちろん、細かすぎる文字などは点々になってしまったりすることもあるのですが、それすらもかわいく見えます。グラフィックデザイナーの性にあってると思うので、3Dプリンタよりおすすめです。これまで、母校の30周年記念ロゴを使った写真作品を作ったり、コマ撮りや物撮りの撮影素材、ちょっとした装置など作ってきました。また、このために大量のアクリル板を所持していたことが、まったく別の作品の原理の発見にもつながりました。

私の仕事道具

石川将也

1980年、東京都生まれ

Web:https://www.cog.ooo

Instagram:@kamone

 

【私の仕事道具-No.02:小玉千陽】

私の仕事道具

PP Mobler〈PP502 Swivel Chair〉

機能性は抜群だが、どこか見た目が無機質だったり過剰すぎたりするものが多く、なかなか心動くものに出会えずにいたワークチェア。ある日、家具屋で偶然存在を知ってしまった「PP502」は、出会った瞬間からその曲線美と素材の融け合い方、そして快適な座り心地を忘れられずにいた。座っている最中はけっして主張しないが心地よいホールド感に安心して身を任せられ、立ち上がって少し進んで振り返ると、その美しさに思わずにやけてしまう、最高のパートナー。仕事をする時間を、PP502の上で「過ごす」という時間に変えてくれる。あとどれくらいのものをここに座ってつくっていけるだろうかとワクワクさせてくれる仕事道具です。

私の仕事道具

小玉千陽(ium inc. / THE GUILD)

1991年、岡山県生まれ
Web:https://ium.jp/
Twitter:@chiharukodama
Instagram:@chiharu.kodama

 

【私の仕事道具-No.03:柿本萌】

私の仕事道具

ネイルシール

個展の時にオリジナルで作ったネイルシールです。パソコン作業をしていると、指先が目に入る時間が多いので、指先がかわいいと気持ちも楽しくなります。セルフでジェルネイルをすることが多く、最近はこの奇妙でカラフルなお花をペタペタ貼って楽しんでいます。

私の仕事道具

柿本萌

1993年、大阪府生まれ
Instagram:@_km_km_mm

 

【私の仕事道具-No.04:東泉一郎】

私の仕事道具

BIC 〈4色ボールペン0.7mm/1.0mm〉

何をやるときでも、どんなテクノロジーを使おうとも、思いついたことを最初に定着するのが、このボールペンです。思いつきや、おぼろなイメージなど、その場でフレッシュなうちにとどめないと逃げてしまうので、頭の中と直結している感じとスピード感が命です。他の筆記用具と粘度が違っていて、自分にとって人器一体感があります。いつでもどこでも持ち歩き、手ぶらの時でも掌に描いて写メに撮ってクラウドに上げておいたりしています。

私の仕事道具

東泉一郎

1958年、東京都生まれ

Web:https://www.higraph.com

Twitter:@hiiiiiiig1

Instagram:@hiiiiiiig1

 

【私の仕事道具-No.05:三澤遥】

私の仕事道具
私の仕事道具
私の仕事道具

実験道具

三澤デザイン研究室では実験を行う。その周辺にはいつも、素材を入れるケース、高さ調整のためのジャッキ、台として使う木板やブロック材等が散らばっている。私の頭の中の状態と一緒だ。整頓できてないし雑然としている。けれど、その混沌こそが心地よい。「これ面白いかな。いや、駄目か」と仲間とぶつぶつと会話しながら、手探りでアイデアを組み立てていく。実験が順調に行くとは限らないが、私にとってはその試行錯誤こそがつくる喜びそのものである。

私の仕事道具

三澤遥(日本デザインセンター三澤デザイン研究室)

1982年、群馬県生まれ

Web:https://misawa.ndc.co.jp/

 

【私の仕事道具-No.06:加瀬透】

私の仕事道具

GSIクレオス〈Mr.リニアコンプレッサーL7レギュレーター/プラチナセット〉

私がこの10年くらいの間で制作上扱ってきたサイズは、名刺サイズからB1サイズくらいが主なのですが、去年あたりにこれら以外のサイズに対する身体感覚が欠如していることに、強く違和感を覚えることがありました。もちろん、ある一定の環境・制約を前提に制作することが楽しいのに変わりはないのですが……。そこでデスクトップ以外の環境で制作する身体性を実感するため、今年は工場跡のような物件を借り、上記の画材を用いてより大きなサイズの画面に向き合っています。描いたり、嗅いだり、道具を掃除したりすることを通じてそのスケール感を実感していますが、この体験を通じてこれまで慣れ親しんできたスケールについての向き合い方も変わるのかもしれません。

私の仕事道具

加瀬透

1987年、埼玉県生まれ

Web:https://torukase.com

Twitter:@twkstr

Instagram:@kasetoru

 

【私の仕事道具-No.07:脇田あすか】

私の仕事道具

紙束と書くもの

出力した不要な裏紙などをクリップでまとめたもの、あるいは付箋(白が良い)は、つねに机上に用意してあります。書くものは鉛筆・ペン・筆などとくにこだわりはなく、一番先に手が届いたもので。打ち合わせや電話でささっとメモをとる、頭がパンクしそうなときにやることを書き出して整理する、ふと思いついたものをスケッチする……といった用途なので、頭の延長として毎日無意識に使うために、こだわりの道具よりもなんでもない道具の方が好き。

私の仕事道具

脇田あすか

1993年、愛知県生まれ

Instagram:@wakidaasuka

 

【私の仕事道具-No.08:佐々木俊】

私の仕事道具

コンビニのコピー機

事務所の向かいにあるコンビニのコピー機を愛用している。コピー機で極端な拡大縮小を繰り返し出力することで独特の荒れたテクスチュアを得ることができる。この技法は新しい発明でもなんでもなく、仲條正義さんを代表格に日本デザイン界に太古から伝わる技であろう。コピー機によって、それぞれの「荒れ具合」に違いがあるが、事務所の向かいの「ミニストップ」のヤツが僕にとって一番ちょうど良いのだ。ついでに甘いものを買って事務所に戻る。

私の仕事道具

佐々木俊

Web:https://ayond.jp/

Twitter:@nuhsikasas

Instagram:@nuhsikasas

 

【私の仕事道具-No.09:正田冴佳】

私の仕事道具

①メモ帳 + ペン(モレスキン/ロイヒトトゥルム1917 + COPIC〈コピックマルチライナーSP 0.5〉/Apple〈 iPad Pro 11インチ〉/ + Apple〈Apple Pencil〉

用途:打ち合わせ、アイデアスケッチなど。

打ち合わせ時にデザインやアイデアのラフスケッチを描いて見せたり、日常生活の中で気になったもののスケッチや、アイデア・読書・勉強のメモ用など。仕事でもプライベートでもメモ帳は大抵持ち歩いていて、気になったことや思いついたことなど、とにかく何かを始める前は、まずは描きます。

私の仕事道具

②鉱物や小さなオブジェ、拾ってきた何か分からないものたち

用途:リファレンス。

鉱物やオブジェ、道端の気になったものを拾ってきたり、細々したものをたくさん集めてしまいます。形状や色、質感を制作の参考にしたり、仕事の合間に無意味に握るなど。

私の仕事道具

正田冴佳

1989年、東京都生まれ

Web: https://saekashoda.com/

Twitter: @s____John

Instagram: @s____john

 

【私の仕事道具-No.10:菊竹雪】

私の仕事道具

BMI〈メジャー〉/PILOT〈プチ細字〉/TOO〈Section Croquis〉

アナログな道具ですが、どれも長く愛用しています。メジャーはBMIの赤色が気に入って、必ず携帯していますが、メーカーはときどき浮気します。筆記用具はサインペンが好みです。サインペンに限らず万年筆もボールペンもなぜかインクはブルーにこだわりがあります。

私の仕事道具

菊竹雪(株式会社コンパッソ/東京都立大学)

東京都生まれ

http://www.yuki-kikutake-design.com

 

【私の仕事道具-No.11:田中良治】

私の仕事道具

放送プラットフォーム〈シラス〉

ポスターなどのメインビジュアルを作る時はテーマにあった音楽を聴きながら作業をしますが、事務的な作業や退屈な作業の時(結構多い。AIにやってもらいたい)に「シラス」の番組を聴きながらPCに向かっています。現代においてモノを作る、何かを表現する上で行動の指針になるようなテーマやインスピレーション、知識を与えてくれます。若い頃のようにインプットに割く時間が十分にあるわけではないので、好奇心を保つうえでも助かっています。https://shirasu.io/

私の仕事道具

田中良治(株式会社セミトランスペアレント・デザイン)

1975年、三重県生まれ

Web:https://ryojitanaka.com/

Twitter:@_tnk 

Instagram:@_tnk

 

【私の仕事道具-No.12:増永明子】

私の仕事道具

三角定規/PentelPula Man〉/三菱鉛筆〈ユニホルダー〉/Letrasetの転写シート圧着用具

手書きの際、ラフやメモを書くのは三菱鉛筆〈ユニホルダー〉、万年筆のような書き心地のPentelPula Man〉を長年愛用しています。三角定規は、本や資料にまみれてすぐにどこかにいってしまうので複数枚を持参しています。Letrasetの転写シート圧着用具は、通常の使い方以外にも立体物の製作の折り加工としても多用しており、これを素地として仕上げると背筋が伸びたようなきちんとした仕上がりになります。

私の仕事道具

増永明子

京都府生まれ

Web:https://masdb.jp/

Twitter:@akikomasunaga

Instagram:@akikomasunaga

 

【私の仕事道具-No. 13:味岡伸太郎】

私の仕事道具

三菱鉛筆〈uni 4B〉/ARISTO〈Penac NP Trifit 500 1.3mm 極太ペンシル〉/ブランド不明〈0.9mm 極太ペンシル〉/ZEBRA〈Tapliclip 1.6mm〉

上からuniの4Bの鉛筆と1.3mm2Bのシャープ。この柔らかさと太さがないと、手がスムーズに動かず、考えもまとまらない。デザインのプランを考えるときの必需品。最初、大づかみに描き、その上から強く決定線を描き、塗りつぶすためにも重宝する。0.9mm2Bのシャープは若干細かい時に使用。1.6mmの青色のボールペン、近年はサインするときに使う。

私の仕事道具

味岡伸太郎(DesignStudio STAFF/JAGDA・TDC会員)

1949年、愛知県生まれ

Web:http://www.ajioka3.com

公開:2022/10/17